夢か現か

何でもない日常の手記.そして遺言書.

新しい世界

私は一時的かも知れないが新しい世界の観測を得た.

目に入る物一つ一つのアウトラインはより鮮明になり,コントラストは高くなった.明瞭でありながらも,何処かボヤけた視界.光は強く,それで居て優しく眼球を突き刺す.カクテルパーティー効果の弱い私でも,煩雑な音の交響の中に一つ一つの個性を見い出し易く成り,振動に奥行を感じる様にすら成った.例えば音楽を聴きながら散歩をすると,歩いて居る自分とは別に,どこかで音楽の世界に引き込まれて居る自分が居る.惹き込まれるのでは無く,私の一部が正しく音楽の中に入り込む.私が音を奏でる訳でも,歌う訳でも無い.それなのに,私はその振動の一つに成り,紛れ込む.

小さな時に体験した夢.私自身が何処までも大きく成ったり小さく成ったりし,体に触れる感覚は硬いのに柔らかい,そんなアンビバレンスの内観.あの感覚を取り戻した気がした.

新しく,懐かしい世界.

 

狂気の沙汰

中国人のアヤフヤな日本語さえも気持ちが良い.

飯が上手い!世界は湾曲の鮮明さを帯び,カオスを取り戻す.

ユ-リンチ-!!!

私は今キチガイなので,何かの間違いで自死を選択したら,

残念ながらこれが遺書に成って了ったら,私に関係する諸々に対しては微塵の申し訳も無い.

日記

精神科の待合室にウィトゲンシュタインの『反哲学的断章』があった.

博識でも無く浅学菲才ながら,哲学や自然科学を筆頭に学問に強く関心を示す青年である私は,以前から耳にしていたその学者の名を目にした瞬間,その著作を手に取らずには居られなかった.最初の十数ページだけを読んで判ったのは,これは彼の整理された思想書や小説の類では無く,断片的なメモ--断章--を集めた物であるらしい事だ.その中にはやはり断片的であるが為に理解の及ばない文面や,その反対に共感し得る文面もあり,様々だった.

もうすこし語りたい所だが,招集が掛かってしまった.

これから世界の新しい見方を受け取りに行く.

続きはまた後日にでも……

 

 

今日は

彼女があれ程待ち詫びたはあっけらかんと散り,

愛おしくも暑苦しいは憂鬱に呑まれ,

季節が眠りの備えをせんとするは枯葉と共に過ぎ去ろうとして居る.

そんな季節の長い永い休眠期間でもあるとの接続を果たそうとするこの時期に,

晴天の霹靂とでも言うかの様な,

寒空の花火が打ち上る.

 

今日は,花火が打ち上る.

 

そんな知らせに胸を躍らせつつも,

高校一年生だった頃の友人*1に放った言葉を思い返す.

 

 

「花火を一人で見てみたい.なんと言うか,ノスタルジーがある気がするんだ」

 

いつからか,私は孤独に郷愁を覚える様になった.

人はきっと,孤独へと,虚無へと還って行く者だと,

そう思った時さえあった.

 

光があれば影がある様に,

己が心を暗闇と寒さに保つ事により,

その火の花は輝きを増すだろう.

 

今日は,季節の移ろいを余所目に,

他の誰でも無い,自分自身と共に,

冷たい空に打ち上る,火の花を見に行く.

 

 

 

*1:交友を長く保てない私とも長く付き合いのある数少ない友人の1人.主に猥談と芸術で繋がって居る.

芸術関連の情報は彼から仕入れる事が多い.

夢日記

 僕は中学生か高校生くらいだろうか.

家族の無理解と虐待に耐えきれ無くなった.

1500円鳥渡のしょっぱい所持金ながら,

青さの滲み出る僕は家出を決意する.

家出を思いついたのは迷路染みた横浜駅を彷徨していた時の事だった.

うんと遠くに行ってやろうとも思った.

携帯電話の電池を持たせて置きたい僕は,

行き先をその電子端末で調べる事をせず,駅員に聞いた.

 

「京都に行きたいのですが」

「……品川から新幹線d」

「すみません,新幹線を使わないルートが知りたいです」

そうなりますと……斯々然々……

米原から琵琶湖新快速の満州赤穂行きに乗っていただきますと

京都に到着します.

駅員はコンピューターで乗り換えを調べ,

丁寧にもメモを取りながら僕に順路を教えてくれた.

僕はそれを受け取り礼を告げ,別の改札に移動した.

 

 僕の所持金では京都なんか行けやしない.

そこでどうするか,友人がやっていた手口で不正乗車する.

何,簡単さ.改札のセンサーを反応させないだけで良い.

改札さえ潜り抜ければ後は悠々自適と旅ができる.

場所を移動したのは,万が一失敗した際,

顔見知った駅員に断罪されるのは耐えられなさそうだという感情論と,

事を起こすのに最適な改札を探す為だった.

 

 この日は調子が良かった.

まるで電車賃を払って何の罪もなく乗車するが如く,

あくまで自然体で改札を通過する事ができた.

調子付いた僕は,そこからは我が物顔で旅路を行った.

 

 京都駅に着いた僕は腹が減って死にそうだった.

僕に理性など無かった.

空腹を極めた僕にあるのは野生,その生存本能だけだった.

ただ食べたいという欲にだけ付き従った僕は,近くにあった店に入り,

1400円の豚しゃぶコースを頼んだ.

本来なら新たな拠点を見つけるまでの間はなけなしの1500円が命綱だ.

それだのに散財するなぞ,自殺行為の類だ.

そう,本来なら.

 

 行き当たりばったりで京都まで来た上に

所持金も殆ど無くしてしまった僕の計画はこうだ.

ひたすら盗みを働き,転売で生計を立てる.

馬鹿な考えだとは思わなかった.

家出をしようと思い至った段階で,

僕は正常な人生を辞めたくて仕方が無かった.

普通じゃないことがしたい.

本来の生き方なんて捨ててやろう.

浅学菲才で金も人脈も無い僕はそう思った.

飛んだ現実逃避だ.

 

 取り敢えずの寝床が欲しい.

野宿をするしか無いとなると,寝袋が必要だろう.

駅の付近で雑貨店を見つけると,先ずはサングラスと派手な帽子を盗んだ.

タグを取り,あたかもそれを付けて来店したかの様な態度で身に付ける.

そうして次にスーツケースを手にする.

携帯電話を取り出し,デカい声でデタラメに中国語めいた事を喋る.

これで観光客に擬態できる.

観光客なら大きなスーツケースを持ち歩いていても違和感は無い.

 

 複数階に面する大きなチェーン店だ.

店員はいちいち客の顔なんて覚えちゃいない.

案の定,盗品を身に纏ったままフロアを闊歩しようと問題は無かった.

そのまま寝袋と少しの食料をスーツケースに入れる.

この瞬間を目視されなければ造作も無い.

店中にある防犯カメラは多くがフェイクだ.

ハリボテだけでも抑止力になる.

 

  駅から少し離れた公園に到着すると,

そこでは浮浪者が晩酌を行っていた.

丁度いい.そこに紛れれば不自然ではなかろう.

浮浪者の近くで盗んだサラダチキンとお菓子を摘まんでいると,

喜々とした顔で話しかけて来た.

「兄ちゃん,見ーひん顔やなあ」

 

 話かけられるとは思っていなかったので遅れて反応した.

「ええ,最近家を失った者で,はは……」

浮浪者はふーんと言った顔付きで返す.

「あんた,家出少年やろ」

いとも容易く見抜かれた驚嘆を隠しきれない僕に浮浪者は追い打ちをかける.

「図星か.その顔だと,何か悪い事をしたって感じやなあ.

それとも,これからするんか?」

全てがお見通しの様だ.

僕は開き直って語りだす.

「ええ,そうです.僕はこれから悪事を働いて生きていく.貴方達みたく諦めて空き缶を拾って生きていくんじゃあない.僕は僕のやり方で人生をやり直す」

「ほう……それがあんたにできるかね.

できひん事くらい自分でわかってるんとちゃうか?」

何を言う……僕はここまで上手くやって来た.

改札や雑貨店の穴を突いて,家出を成功させた.

その様にして,これからもやって行く.

 

「いや,僕にはできる!」

「できひん……だってな」

そう言って浮浪者は自分の顔を,その皮膚を剥いだ.

ブーーーッ……ブーーーッ……

僅かに電池の残った携帯電話が鳴りだす.

父からの着信だ.

目の前の怪奇から逃れたい一心で忌み嫌った父に慟哭する.

「親父!助け……」

 

「お前は逃げられない」

 

 

 

手記(ブログ)を始める

人生で初めて電脳空間上の手記(ブログ)を開設してみようと思う.

(”人生で初めて”とは言う物の,SNSもそれだと言われるとそうでも無く成ってしまう)

 

まあ兎も角!

 

この手記の目的は視聴数集めによる広告収入や

時代性に則った形での承認でも無い.

ただ綴りたい様に思った事や日常を綴る事だ.

 

という事で,気儘に,試行錯誤しながらやって行こうと思う.

第一目標は一年の継続だ.